【訪問注意】秘境駅って何がいいの?
乗換BIG4インタビュー 三上編vol.1
駅すぱあとのヴァル研究所が誇る鉄道ファン、乗換BIG4こと三上、鈴木、廣戸、夏目のインタビューをお送りします。
PROFILE 乗換BIG4:三上(みかみ) ヴァル研究所コンテンツ開発部所属。1つのジャンルにとどまらないがあえて言うなら「乗り鉄」。鉄道を含めた公共交通の知識の幅広さは、社内随一である。
——ご自身を、漢字一文字で表すと?
三上:何でしょうね。「地」ですかね。土地の地、地下鉄の地、地方の地。ローカル線とか、秘境駅とかが好きなんですよ。最近よくテレビで取り上げられて、ちょっとブームになっちゃってますけれど。
——ああ、何の番組だったか、安田大サーカスの団長さんが……。
三上:はい。やってますね。
——お気に入りの秘境駅は?
三上:一般的にはJR北海道の小幌駅と言われています。小幌駅は、作家の牛山隆信さんが開設した『秘境駅へ行こう!』というサイトでも、ランキング1位ですから、マニアなら一度は行ってみたいと思うでしょうね。でも、私の中の1位は、静岡県の大井川鐵道の尾盛駅ですね。
——尾盛駅はどんな秘境なんですか?
三上:何もないです、ここは。周りに誰も住んでなくて、道路もない。鉄道しかない。しかも数年前から熊が出るようになったとかで、車掌さんから「降りないでください」って言われるぐらいなんですよ。
尾盛駅の全景
何もない、誰もいない
——人より野生の熊に出会う確率のほうが高そうですね。もはや駅である意味さえ、分かりません。
三上:さすがに熊は危険ですから、構内にある物置小屋が解放されました。以前は鍵が掛かっていて関係者以外は入れないようになっていたんですけれど。
——そんなところへ、わざわざ何をしに行ったんですか?
三上:秘境中の秘境である尾盛駅に行くという目的もあったんですが、もうひとつの目的は、その大井川鐵道井川線に乗ることでした。井川線は、レールの幅が通常の列車よりも狭いんですよ。だいたいJRとかは1mぐらいなんですけれど、井川線は約70cmです。もともとその路線は、ダムを建設するための資材を運ぶためのものだったんです。でもダムができちゃったので、いらなくなったんだけれど、お客が乗れるようにしようということで、トロッコが走っているんです。紅葉のシーズンには結構、観光客が乗ってますよ。
——でも、紅葉を楽しむ人たちは普通、尾盛駅では降りないんでしょうね。
三上:降りないでしょうね。何もないんですから。
——尾盛駅で降りて、何をしてたんですか?
三上:戻る方向の列車が来るまでだいたい1時間ですから、写真を撮って、あとはただ、たたずんでましたね。その間、本当に誰にも会いませんでした。しんとして音もない、まさしく無の境地ですよ。たまに鳴く鳥の声や、風に揺れる葉っぱの音が、やたら大きく聞こえます。やがて、遠くのほうからゴトンゴトンと列車の音が聞こえてきて、それが近づいてくるんです。その音を聞いてやっと、「ああ、無事に帰れる」って安心するんです。
——なるほど。ひょっとしたら遭難しちゃうかもしれない駅ってことですもんね。
三上:そうなんです。
——へえー。って、うっかり流しそうになりましたけれど、今ダジャレ言いましたね。
三上:(照れ笑い)。
(vol.2へつづく)